何が怖くて3:したたかな夢


『何が怖くて』では、人間が根本的に抱えている「死への恐怖」が一体何なのかを解き明かそうとしている。
でも、私は天邪鬼なので、実は、「恐怖」を突き止めることで、人間の持つ強さみたいなものが湧き上がってくるのでは、と考えている。

<人間ほど、したたかな生物は他にはいない>

ハイエナは、他の生物が狩った生物を横から奪い取る。
カッコウは、モズなど他種の鳥の巣に卵を産み、自分の雛を育てさせる。
(横道に逸れるが、「したたか」を辞書で引くと、単に「強い」とか「手ごわい」という意味らしい。「したたか」にはもっと、「ずる賢さ」のような意味合いがある気がする。)
でも、ハイエナもカッコウも、人間には敵わないだろう。

外では「環境を守れ!」と叫びながら、家に帰った途端に、エアコンのスイッチを入れてしまうし、健康診断結果を見て、「やっぱり健康は宝だ!」と実感しながら、そののまま友人と飲み屋に行き、タバコを吸いながらビールをお代わりしてしまう。
こんな事を書くと、お叱りを受けそうだけど、温暖化で南極の氷が全て溶けても、自動車や工場の煙で永続的に空気が真っ黒になっても、海と土壌が回復不可能なぐらい汚染されても、巨大な隕石が地球に飛んできても(さすがにこれは駄目かな)、人間という種は(それこそ)したたかに生き抜いていくのではないかという気がしている。
個々人は脆弱かもしれないが、人間という種は、したたかで、たくましい。

<死は避けられるか?>

したたかな人間なら、死すら、ひょいとかわしてしまうだろうか?
誰でも、「それは無理だ」と考えるに違いない。
それでも、人間は昔から、無謀な挑戦を続けている。
古代エジプトの「死者の書」から、中世ヨーロッパの錬金術を経て、現代のクローン技術へと。
私達は、古来の錬金術の無謀さを鼻で笑いながら、現代のクローン技術に「ひょっとしたら・・・」という思いを禁じえない。

22世紀の人が見たら、「クローン技術で体を取り替えるなんて、何とも無謀な事を」と、鼻で笑いはしないだろうか?


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